五次元定型音響文字集蔵体
ARCHIVES OF THE FIFTH-DIMENSIONAL FIXED FORM TEXTS ON SOUND LETTERS
2000 Furuya Toshihiko


 俳句形式の定型音響文字連鎖を合成し、まず二次元に配置する。定型文字連鎖の形式は、文字の折り畳みを可能にし、仮名文字の音響文字的な性質が、離散性と可読性を一致させながら、音声を同時に折り畳む。二次元の配置は、俳句形式を持つ定型連鎖の両端、すなわち二つの切断部での折り返しによる二方向性と方形文字の縦横の二方向性とをあわせて、さらに二次元配置の中心を斜めに横切る四本の線とを合わせて、合計七十二の切片を封印する。その閉鎖された回路あるいは賭博場が、六個で三次元の配置を作り、さらに三次元の配置が六個で四次元の配置を作り、さらに四次元の配置が四個で五次元の配置を作る。この定型文字連鎖の多次元展開は、集積的な拡張を指向しているように見える。文字は一文字増える毎に次元を一つ加算していくと考えられがちであるがそれは間違っている。文字の決定は選択肢そのものの無化であるだけでなく、選択の事実そのものの無化である。書き換え可能な文字であれ不可能な文字であれ、一次元の連鎖の中には、零次元の点的な選択はもはや含まれていない。次元の加算は、一次元の連鎖の折り畳みにのみ起因する。ここにある、全部で一万三百六十八の封印は、構造的で有機的な構築物ではない。全てが一次元の線によって成り立つが、その線は動態的なものではない。言語作用は、そこから発生するのではなく、そこへと吸収され絶対的に停止する。確かに、それぞれの切片は、一本の線へと結合してその疑似連続性の方向へ消滅するものでもあるし、分断がもたらした交叉によって別の疑似連続性の方向へと消滅するものでもあるが、この少なくとも二つ以上の消滅がせめぎ合う場に、その本来の目的として浮かび上がり、実際に残存するのは、徹底的に死んでいる集蔵体なのだ。この集蔵体は、外部への逃走線そのものの封じ込めであり、内的な流動性そのものの外部的な停止である。